きっと誰もが一枚は、ユニクロの服を持っているのではないでしょうか?
シンプルで着心地が良くて、お値段もお手頃。気づけば毎日のようにユニクロのアイテムを着ている、なんて方も多いはず。
今や日本だけでなく、世界中で愛されるブランドとなったユニクロ。その成功の裏には、計算しつくされた独自のマーケティング戦略があります。
今回は、ユニクロがなぜこれほどまでに多くの人に支持され、世界的なアパレルブランドへと成長できたのか?
その秘密を「LifeWear」という哲学から、具体的な戦略まで、わかりやすく徹底的に解説していきます!
この記事を読めば、ユニクロの成功の理由と、自社に活かせるマーケティング戦略のヒントがきっと見えてくるでしょう。
ページコンテンツ
- 1 ユニクロのブランド哲学「LifeWear」
- 2 ユニクロのターゲットに関する考え
- 3 ユニクロを支える4P分析
- 4 ユニクロのキャンペーン事例
- 5 ユニクロのデータ戦略
- 6 ユニクロの世界戦略
- 7 サステナビリティへの取り組み
- 8 ZARA、H&M、GAPとの比較
- 9 まとめ
- 10 コンビーズメールはシンプルで続けやすいメルマガ!
- 11 この記事のライター
- 12 この記事の監修
- 13 Webマーケティングに関するオススメ記事
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ユニクロのブランド哲学「LifeWear」
ユニクロのマーケティング戦略を語る上で、絶対に外せないのが「LifeWear(ライフウェア)」という考え方です。
LifeWearとは「あらゆる人の生活を、より豊かにするための服」のこと。
流行を追いかけるのではなく、着る人の生活ニーズから考え抜かれ、進化し続ける「究極の普段着」を目指しています。
このLifeWearという哲学は、単なるキャッチフレーズではありません。
服づくりから、お店の雰囲気、情報発信まで、ユニクロのあらゆる活動の土台となっています。
服づくりのこだわり
ユニクロにおけるLifeWearは「アートとサイエンスから生まれる」としています。
たとえば東レとの共同開発によるヒートテックやエアリズム。革新的な素材開発と、どんな人にも似合うベーシックなデザインを組み合わせてLifeWearの概念を実現しています。
新商品開発においては約1年前からコンセプト会議を始めるといいます。お客さんの声や最新トレンド、素材の研究を重ねて、色や形を細かく調整して製品化されていくそうです。
ヒートテックの吸湿発熱機能や、エアリズムのサラサラ快適な着心地は、まさにLifeWearが生み出した「服の進化」の代表例といえますね!
LifeWearを伝える工夫
LifeWearの考え方やそれがどんな服なのかを知ってもらうために、ユニクロは様々なメディアを活用しています。
ウェブサイトはもちろん、オリジナルのフリーペーパー「LifeWear magazine」を発行したり、YouTubeチャンネルで「LifeWear Music」という心地よいBGMを配信しています。
またメディアでは単なる服の着こなし方だけでなく、世界中の人々のライフスタイルや、服と環境問題の関わりなども紹介。
製品の機能だけでなく、着る人の暮らしや気持ちに寄り添う服であることを伝えています。
サステナビリティとの結びつき
LifeWearは、地球環境や社会に配慮する「サステナビリティ」とも深く繋がっています。
長く着られる高品質な服、使わなくなった服の回収・リサイクル活動(RE.UNIQLO)、環境負荷の少ない素材を使うことなどは、「ただ消費されるだけでなく、社会との調和を目指す服」というLifeWearの考え方そのものです。
LifeWearがあるからこそ、ユニクロは流行を追うファストファッションとは一線を画した存在になれています。
「服でみんなの暮らしを良くしたい、社会にも貢献したい」という明確な思いが、一貫したメッセージとなってお客さんに伝わり、共感と信頼を生んでいるんですね。
ユニクロのターゲットに関する考え
ユニクロのマーケティングでユニークなのは、ターゲットのお客さんを決めるときに、年齢や性別、ライフスタイルといった特定のグループに絞り込まないことです。
ユニクロが目指すのは、「Made for All(すべての人のために)」というコンセプトの通り、特定の誰かではなく、性別も年齢も国籍も関係ない、あらゆる人々です。
ユニクロのウェブサイトを見てみると、「〇〇歳向け」「△△なライフスタイル向け」といった限定的な表現はありません。誰でも気軽に服を選べるように設計されています。
じゃあ、誰でもいいってことは、ターゲットがいないの?というと、そうではありません。
ユニクロが本当に大切にしているのは、具体的な人のグループではなく、服に対してお客さんが持っている「こんな服が欲しいな」という根本的な気持ち(ニーズ)です。
ユニクロが特に応えたいニーズは、例えばこんなものです。
・シンプルでベーシックな服が好き: 流行に左右されすぎず、普段から着られるシンプルで合わせやすいデザインを好む人たち。個性を主張しすぎない「定番服」を求めるニーズに応えています。 ・品質と機能性を重視したい: 値段だけでなく、しっかりした品質や、ヒートテックやエアリズムのような便利な機能性を重視する人たち。着心地の良さや実用性を求めるお客さんに強く響いています。 ・良いものを手頃な価格で買いたい(コスパ重視): 高品質な商品を、手に取りやすい価格で手に入れたいと考えている人たち。ユニクロ独自の生産体制(SPA)がこれを可能にしています。 ・色々な種類から自分に合うものを選びたい: フリースで50色以上もの色を展開したように、定番のアイテムでも豊富な色やサイズの中から、自分にぴったりの一着を見つけたいというニーズ。 |
ユニクロは、「誰に売るか」でお客さんを絞り込むのではなく、「どんなベーシックな服を作るか」に焦点を当て、そこに機能性や品質、色などの付加価値を加えることで、結果として幅広い層の多様なニーズを満たすことに成功しているのです。
「おしゃれかどうか」「トレンドか定番か」といった、お客さんの時々の気分や状況に合わせたニーズに応え続けることが、ユニクロの大きな強みとなっています。
また最近では、環境や社会問題に関心がある人たちや、特定のデザイナー、アニメなどのコラボ商品を通じて、幅広い客層を取り込んでいます。
ユニクロを支える4P分析
ユニクロがこれほど成功しているのは、「LifeWear」という哲学を基盤に、マーケティングの基本的な要素である「4P」(Product: 製品、Price: 価格、Place: 流通、Promotion: 宣伝)をとても上手に組み合わせているからです。
それぞれの要素が連携して、ユニクロならではの価値を生み出しています。
製品 (Product):シンプルだからこそ、中身にこだわる
ユニクロの服づくりは、LifeWearの考え方を形にすることです。
品揃えはベーシック中心: 流行に左右されない、シンプルで長く着られる定番アイテムがメインです。だから、どんな人にも、どんなシーンにも合わせやすいんですね。
素材・品質・機能性は譲れない
見た目だけでなく、素材の開発と品質の管理に徹底的にこだわっています。
ヒートテック、エアリズム、ウルトラライトダウンなど、ユニクロにしかない高機能商品が生まれ、快適さや便利さといった価値を提供しています。
東レのような企業との協力や、「匠(たくみ)」と呼ばれる熟練技術者が工場を指導することで、高い品質を保っています。
コラボレーションで楽しさをプラス
定番アイテムがありつつも、人気のデザイナーやアーティスト、キャラクターとのコラボ商品も積極的に作っています。
UT(ユニクロTシャツ)のように、様々なデザインのTシャツを通じて、着る人が自分らしさを表現できるツールにもなっています。
これは、ファッション好きや特定のファン層を取り込み、ブランドに新鮮さや話題をもたらすための工夫だといえます。
お客さんの声を反映
お客さんからの意見やレビューを、新しい商品の開発や既存商品の改善に活かしています。
オンラインストアのレビューや、AIチャットボット「IQ」などを通じて集まった声が、新しいニットが生まれたり、おなじみの商品の着心地がさらに良くなったりすることに繋がっています。
価格 (Price):良いものを、誰もが買える値段で
ユニクロの価格戦略の大きな特徴は、「高品質なのに、手頃な価格」を実現していることです。
ユニクロ独自の生産・販売体制(SPA)
ユニクロでは商品の企画からデザイン、素材選び、製造、物流、そしてお店での販売まで、全てをグループ内で一貫して行っています。
これにより、間に他の会社を挟まないので、コストを大きく削減できます。
このコスト削減分を商品の価格に反映させることで、圧倒的な安さを実現しているのです。
「適正価格」を目指す
ただ安いだけでなく、品質に見合った「ちょうど良い価格」で提供することを目指しています。
このことにより、安さをめぐって価格競争や価格破壊が起きることもなく、ユーザーが納得できる値段をキープしたまま利益をあげられる仕組みになっています。
これもまた、SPA体制だからこそ出来ることだといえます。
戦略的な値下げも
ユニクロでも期間限定価格として一時的にセールを行うことがあります。
定番ではありますが、セールは在庫処分と集客をどちらも成し遂げられる強力な手法。お店にお客さんを呼び込んだり、「ついでにこれも買っちゃおうかな」という気持ちにさせるための工夫です。
流通 (Place):お店でも、ネットでも、アプリでも
ユニクロは、お客さんが「いつでもどこでも」ユニクロの商品を買えるように、実店舗とインターネットをうまく組み合わせたオムニチャネル戦略で知られています。
様々なタイプの実店舗
ユニクロでは都市の中心にある大きな旗艦店、地域の主要道路沿いにあるロードサイド店、ショッピングモールの中のお店など、色々なタイプの実店舗を展開しています。
これにより、幅広い属性のお客さんが来店しやすい状況となっているのです。
さらに日本国内だけでなく、海外にも積極的に出店しています。
なかでも大きな旗艦店は、それ自体がユニクロのブランドイメージを世界に発信する拠点になっており、ただ単に売上を上げる店舗以上の意味がそこにはあるのです。
このようにユニクロは実店舗に十分な力を注いでおり、オンライン化への移行にリソースを集中させている他社とはマーケティング的にもブランディング的にも大きな違いを見せています。
便利なオンラインストア
とはいえ、実店舗と同じくらいオンラインストアにも注力しています。
たとえば小さいサイズや大きいサイズの商品はオンライン限定で取り扱うことで、不良在庫を防ぐと同時に、ユニクロの対応幅の広さをアピールしています。
また、サイズ選びを手伝ってくれる「MySize ASSIST」や、AIが買い物をサポートしてくれる「IQ」など、オンラインならではの便利な独自ツールも開発しています。
幅広い役割をもったアプリ
ユニクロのアプリは、実店舗とオンラインストアどちらにも集客できるように作られています。
アプリ会員証の提示、限定クーポンの入手、買った商品履歴の確認、オンラインストアでの買い物、店舗の在庫確認など便利な機能をそろえており、これひとつでユニクロでの買い物に関する困りごとが解決できるように工夫されているのです。
また実店舗では商品のバーコードをスキャンして詳しい情報やレビューを見ることも可能です。
「IQ」や、みんながおしゃれな着こなしを投稿するオリジナルのSNS「StyleHint」とも連携しており、アプリから出来ることは非常に多いといえます。
実店舗とネットをシームレスに(オムニチャネル)
ユニクロの最大の特徴のひとつとして、実店舗とオンラインを隔てることなく捉えているスタンスがあります。
つまりお客さんは実店舗だけ、オンラインだけ、といったように偏ることなく、よりシームレスに買い物をすることができるのです。
このようなスタイルを、マーケティングの世界ではオムニチャネル、といいます。
オンラインで買った商品を近くのお店で受け取れたり、ネットで買った商品を店舗で返品できたり、お店に行く前にオンラインで在庫を確認できるサービスもその一貫。
また前述の、実店舗でQRを読み込み、詳しい情報をオンラインショップで見るという仕組みもオムニチャネルとして代表的な例となります。
これにより、お客さんは自分にとって最も便利な方法で買い物ができます。
お店、オンラインストア、アプリを連携させることで、ユニクロはお客さんとの接点を最大限に増やし、便利で気持ちの良い買い物体験を提供して売上を伸ばしているのです。
プロモーション (Promotion):LifeWearの価値を世界へ
ユニクロは、LifeWearの良さを効果的に伝え、お客さんに「買いたいな」と思ってもらうために、様々な方法で宣伝活動を行っています。
広告活動
ユニクロではオンライン、オフラインに関わらず、広告活動に余念がありません。
たとえばテレビCM。
ヒートテック、ウルトラライトダウン、エアリズムなど、ユニクロでは代表的な商品をシーズンごとにテレビCMで紹介しています。
商品の機能性や、どんなときに着ると便利なのかをわかりやすく見せ、幅広い層に知ってもらうことを狙っています。
綾瀬はるかさんや佐々木希さんなど、好感度の高い有名人を起用したCMも話題になりますね。
またインターネット広告においては、ウェブサイトやSNSで、見てもらいたいお客さんに合わせて広告を表示しています。
洗練されたシンプルな商品写真を用いて、ありのままなのに、どこか他社商品と違っているように見せる。そんな高度なショッピング広告に成功しています。
さらに少し古風な手法に思えるかもしれませんが、新聞折り込み広告の活用にもユニクロは積極的です。
毎朝新聞に折り込まれるチラシを見る人は、いまでもかなり多くいます。
ユニクロはそこを見逃さず、毎週のように折り込み広告を配布してセール商品の情報などを知らせています。
やっぱり紙のチラシを見ながら「何か良いものないかな?」と探すのは、いつの時代も楽しいですよね。
また同じエリアに繰り返し配布し続けることで、ユニクロを利用していなかった層にも親近感を持ってもらう効果を狙っています。
PR活動
ユニクロでは新しい商品を発表したり、メディアに情報を提供して、自社のブランドや商品のニュースを世の中に広めています。
サステナビリティの取り組みに関する情報発信も、会社のイメージアップに繋がっています。
SNSの活用
またユニクロはInstagram、X(旧Twitter)、LINE、TikTok、YouTubeなど、SNSを駆使しています。またそれぞれの特徴に合わせて、情報発信の方法も変えています。
たとえばInstagramではおしゃれな写真や動画で世界観をアピール、Xでは最新情報を発信、LINEではお得な情報を一人ひとりに配信、TikTokでは短い動画による話題性づくり、YouTubeではブランドの考え方や詳しい情報をじっくりと伝えてブランディングしています。
ファッションに詳しいインフルエンサーを起用して若い人たちへの影響力を高めたり、話題をつくることにも注力しています。
グローバルアンバサダー
ユニクロではロジャー・フェデラーや錦織圭選手のような、世界で活躍するスポーツ選手をブランドの顔(アンバサダー)として起用しています。
彼らの活躍を通じて、ユニクロの服の信頼性や機能性の高さを世界にアピールしているのです。
このようにユニクロのプロモーションは、単に服を売るだけでなく、LifeWearというユニクロの価値観を伝え、「ユニクロって良いな」と感じてもらい、お客さんと長く良い関係を築くことを目指しています。
メルマガの配信
アプリの通知と同じように、メルマガもお得な情報や新商品の情報を直接お客さんに届けるために使われています。
ユニクロらしい視覚的かつシンプルなデザインで、お客さんにとって役立つ情報を提供し、ユニクロをもっと好きになってもらうことを目指しています。
ユニクロのキャンペーン事例
ユニクロは、これまでにも多くの人に強い印象を残すマーケティングキャンペーンを展開してきました。ここでは特に代表的な2つの例を見てみましょう。
フリースキャンペーン(1998年頃~)
今ではすっかりおなじみのフリースですが、ユニクロが1998年に1,900円という手頃な価格で発売した当初は、その安さと品質で大きな注目を集めました。
そして翌年、さらに翌年と、松任谷由実さんをCMに起用したり、大胆にも色の種類を51色に増やすなど、積極的に宣伝を展開。
その結果、年間2,600万枚という驚異的な数を売り上げ、「フリース旋風」と呼ばれる社会現象を巻き起こしました。
このキャンペーンは、「高品質な普段着を手頃な価格で」というユニクロの基本姿勢を強く印象付けました。
またたくさんの色の中から選ぶ楽しさは、「普段着」であるフリースの可能性を広げ、ブランドの知名度を一気に高めることにも貢献しています。
この大成功でユニクロの売上は短期間で大きく伸び、「安くて品質の良い普段着」というユニクロのイメージが確立されたのです。
ブラトップキャンペーン(2008年頃~)
2008年に登場したブラトップは、「ブラジャーなしで一枚で着られる」という、それまでのインナーの常識を変える便利なアイテムでした。
ユニクロは、このブラトップの魅力をお客さんに伝えるために、テレビCMを中心に継続的にキャンペーンを行っています。
キャンペーンでは、主に人気の女優さんたちがブラトップを着て、リラックスしたりアクティブに過ごしたりする日常のワンシーンを描いています。
吹石一恵さんや佐々木希さん、綾瀬はるかさんなどがCMに出演し、その自然で美しい姿が話題になりました。
「私をいちばん軽くする服」「夏らしくてさわやかでかわいい」といった言葉と共に、ブラトップを着ることで感じられる解放感や快適さ、そしておしゃれさもアピール。
ターゲットである女性たちの「これ、いいかも!」という共感を呼ぶことを狙った結果、大成功へと繋がりました。
ブラトップキャンペーンは見事に商品の認知度を高め、商品はユニクロの定番人気アイテムへと成長したのです。
これらのキャンペーンは、ユニクロが特定の「目玉商品」に焦点を当て、その商品の良さを効果的に伝えて、新しい市場を作り出し、さらに市場を大きくしたことがわかります。
商品の機能性や便利さを明確に伝えつつ、お客さんの心に響くストーリーを語るのが、ユニクロのキャンペーンの得意なところと言えるでしょう。
ユニクロのデータ戦略
前述のようにユニクロは、実店舗とオンラインをひとつにつなぎ、お客さんの体験をよりシームレスに広げています。
そのなかで収集した膨大な顧客データ。たとえばお客さんの購入傾向や、商品ごとの購入者の平均年齢などがそこに含まれます。
これらが、ユニクロの成長をさらに加速させるための重要な資産となっているのです。
ターゲティングメールの配信
ユニクロではお客さんの購入履歴やウェブサイトを見た履歴などを分析し、メルマガを通じてそれぞれの好みに合わせた情報提供をしています。
このようなメルマガをターゲティングメールといい、お客さんの属性ごとに分けた内容を作成することで、より一人ひとりに刺さるプロモーションが可能になるのです。
顧客データの活用
ユニクロは、デジタルを通じて得られるたくさんのデータを、単に商品販売のためだけでなく、ビジネス全体に活用しています。
たとえばお客さんのアプリの利用状況、ウェブサイトでの行動、買ったもの、IQやStyleHintでのやり取り、レビューなどのデータを分析し、お客さん一人ひとりに合わせたサービスを提供したり、意見を服づくりに直接活かしています。
さらに、これらのデータを使って、どれくらい服が売れるかを予測。必要な量だけを製作してロスを減らすことにも成功しています。
ユニクロは、膨大なデータを中心に、企画から生産、物流、販売までの全てを最適化。お客さんと直接つながる新しいビジネスの形である「情報製造小売業」になることを目指しているのです。
ユニクロの世界戦略
ユニクロが世界中に広がっているのは、「LifeWear」という世界共通の考え方を大切にしながらも、それぞれの国や地域の文化、気候、人々の好みに合わせて柔軟に対応する「グローカリゼーション」という戦略をとっているからです。
LifeWearは世界共通の軸
「あらゆる人の生活を豊かにする究極の普段着」というLifeWearのコンセプトは、どこの国の人にも価値があると考えられています。
その信念のもとで世界的なプロモーション活動に力を入れた結果、ヒートテックやエアリズムのようなユニクロの代表的な商品や、「品質が良い」「シンプル」「機能的」といったユニクロの核となるメッセージは、世界中で広がりつつあります。
国や地域に合わせた対応(ローカライゼーション)
ユニクロでは進出する国の文化や気候、人々の暮らし、どんな服が好まれるか、などの情報を徹底的に調査しています。
そのため文化・宗教への配慮が十分になされています。たとえば東南アジアのイスラム圏向けには、現地のデザイナーと協力して、ヒジャブ(髪を覆う布)やチュニックなど、その文化や宗教に合った服も展開しています。
またインドでは伝統的な普段着であるクルタを現代風にアレンジした「KURTAコレクション」を発売してヒットしました。
現地での人材起用や組織づくり
ユニクロでは現地で起用した人材をリーダーに育てる、現地のパートナーと協力するなどの工夫で、その国ならではの視点を取り入れたビジネスを進めています。
日本本社の考えや文化だけではなく、実際に商品を販売する現地のアイディアをそのまま取り入れることで、異文化圏での商品販売を可能にしているのです。
商品の品質は「共通化」。人材や組織は現地に合わせて「多様化」。この一見相反するように見える要素のバランスが、世界中の様々なお客さんから支持を集める要因となっているのでしょう。
また企画から販売までを一貫して行うSPA体制が、素早く柔軟な国ごとの商品企画や生産の調整を可能にしていると言えます。
サステナビリティへの取り組み
ユニクロは、「服のチカラを、社会のチカラに。」という言葉を掲げ、サステナビリティ(持続可能性)やCSR(企業の社会的責任)を、ビジネスを行う上でとても大切なことだと考えています。
これはLifeWearの考え方とも深く結びついていて、事業を通じてより良い社会の実現に貢献することを目指しています。
使わなくなった服を活かす(RE.UNIQLO)
ユニクロではお客さんから不要になった服を店舗で回収し、まだ着られるものは難民の多い地域に送り、着られないものは燃料や素材としてリサイクルしています。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などと協力して、世界中の難民キャンプなどに服を届ける活動もおこなっています。
環境への負荷を減らす
ユニクロでは店舗やオフィスで使う電気を、地球に優しい再生可能エネルギーに切り替えています。また省エネでの店舗運営にも力を入れています。
また服を作る過程で出る温室効果ガスも大きく減らす目標を立てています。それと同時に2030年までに、使う素材の半分をリサイクル素材など環境に優しいものに切り替えることを目指しているそうです。
たとえばドライEXという機能性素材には、ペットボトルをリサイクルした素材が使われています。
働く人の人権を尊重
服を作っている工場など、ユニクロの商品が生まれる場所で働く人たちの人権を守り、良い労働環境を作ることを徹底しています。
どこの工場で作られているかを公開するなど、情報をオープンにすることで責任を果たそうとしています。
多様性を大切に(ダイバーシティ&インクルージョン)
ユニクロで働く様々な個性や背景を持つ人たちが、それぞれの能力を最大限に発揮できるような働きやすい環境づくりを進めています。女性の管理職を増やす目標を立てたり、障がいのある方の雇用や、LGBTQ+への配慮も進めています。
ユニクロは、これらのサステナビリティの取り組みを、LifeWearという事業の核と結びつけ、「LifeWearは新しい産業」を目指すビジョンの一部として積極的に伝えています。
またウェブサイト、レポート、雑誌、お店での案内、商品タグなど、様々な方法で取り組みの内容や進捗を発信しています。
ZARA、H&M、GAPとの比較
ユニクロのマーケティング戦略がどれだけユニークなのかを知るために、同じように世界中でビジネスを展開しているアパレル企業、ZARA、H&M、GAPと比べてみましょう。
要素 | ユニクロ (Uniqlo) | ZARA | H&M (Hennes & Mauritz) | GAP |
主なターゲット | 幅広い層(誰でも)、品質・機能性・ベーシック・コスパ重視 | トレンドに敏感、ファッション好き(主に若年~中年) | ファッションに関心のある若年層中心、低価格志向 | アメリカンカジュアル好き、ファミリー層 |
ブランドの考え方 | LifeWear:究極の普段着、高品質・高機能・シンプル・長持ち | ファストファッション:最新トレンドを素早く、スピード勝負 | ファストファッション:トレンドを安く、デザイナーコラボ、サステナビリティもアピール | アメリカンカジュアルの定番、ベーシック、デニム |
製品の焦点 | ベーシック中心、素材・機能性の革新(ヒートテック等)、品質、コラボ(UT等) | 最新トレンドの模倣、多品種少量、短サイクル(週2回新作) | トレンド重視、幅広い品揃え、有名デザイナーコラボ、環境に優しい素材(Conscious) | 古き良きアメリカンスタイル、デニム、ロゴ入りアイテム、定番服 |
価格の焦点 | 高品質なのに手頃な低価格(SPAでコスト効率化)、期間限定価格も利用 | 手頃な価格だが、新しさと希少性で定価で売れる割合が高い | 低価格戦略、セールが多い | 中間的な価格帯、セールやキャンペーンが多い |
お店・販売方法の焦点 | 世界中にお店(大型店、地域店)、オンラインストア、アプリ連携(お店とネットを連携) | 良い場所にセンスの良いお店、商品を素早く補充(飛行機も使う)、ネット販売も強い | 世界中にたくさんのお店、オンラインストア | 世界中にお店(最近は再編)、オンラインストア |
宣伝の焦点 | 代表商品のCM、チラシ、デジタル(SNS、アプリ)、世界のアンバサダー | 広告費は抑えめ、お店での体験重視、デジタル宣伝、口コミ・SNSで話題に | 広告宣伝(特にコラボ)、デジタル/SNS、サステナビリティに関する情報発信 | 昔ながらの広告、ブランドの歴史をアピール、季節ごとのキャンペーン |
主な強み | LifeWear哲学、SPAの効率の良さ、製品の革新、価格に対して品質が良い、お店とネットの連携、アジアで強い | スピード(企画から店頭まで)、トレンドをつかむ力、サプライチェーンの素早さ、お店の雰囲気 | 安さ、デザイナーコラボでの話題性、お店がたくさんある、若い人に強い | ブランドの認知度、アメカジのアイコン、定番アイテムの基礎 |
主な弱み | トレンドを追うのは遅い(おしゃれに敏感な人には物足りないかも)、代表商品への依存、世界展開による複雑さ | オリジナリティ(真似だと言われることも)、環境問題への懸念、在庫リスク(すぐなくなることの裏返し) | 品質のイメージ、サステナビリティへの批判(グリーンウォッシュ)、ZARAほどのスピードはない | 最近ブランド力が落ちてきている、新しいものが少ない、価格競争力 |
ユニクロのユニークさと強み・弱み
ユニクロの強みは、
・ブレない「LifeWear」という考え方 ・自分たちで全て行うSPA体制による高い効率と品質管理 ・ヒートテックやエアリズムのような革新的な商品 ・値段以上に品質が良いと感じられるコスパの高さ ・お店とネットをうまく組み合わせた便利な買い物体験 ・特にアジアでの圧倒的なブランド力とお店の多さ ・お客さんのデータを活用して服づくりやサービスを良くしていること |
などです。
一方で、弱みとしては、
・最新の流行をすぐに取り入れるのは得意ではないこと ・ヒートテックのような代表的な商品に頼っている部分があること(新しいヒット商品を生み出し続ける必要がある) ・世界中に展開することで、色々な面で管理が複雑になること ・シンプルな服や手頃な価格の服の市場には、他にもたくさんのライバルがいること |
などが挙げられます。
まとめ
今回はユニクロのマーケティング戦略について徹底解説してみました。
ユニクロの成功の大きな理由は、
・「LifeWear」というブレない考え方が全ての活動の土台になっていること ・SPA体制で高品質な服を手頃な価格で提供し、価格競争力があること ・ヒートテックやエアリズムのような、他にはない画期的な機能性商品を生み出していること ・お客さんの声を服づくりやサービスに活かしていること ・お店とデジタル(オンラインストアやアプリ)をうまく連携させて、便利で快適な買い物体験を提供していること ・世界共通の「LifeWear」を大切にしながらも、それぞれの国に合わせて柔軟に対応していること |
などです。
これからもユニクロは、デジタル技術の進化やデータ活用をさらに進め、変化していく社会の中でその存在感を高め続けていくことが期待されています。
きっとユニクロの挑戦は、これからも私たちの暮らしに寄り添いながら続いていくでしょう。
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この記事のライター
川上あおい
3児の母。川上サトシを支えつつ学んだことを活かし始めたハリネズミ。24時間、車を運転したことがある。

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